口腔機能低下症とは|噛む・飲み込む力の衰えを検査する

「硬いものが食べにくくなった」「むせることが増えた」「滑舌が気になる」。こうした変化は年齢のせいと受け止められがちですが、検査で確かめられる状態です。口腔機能低下症は健康保険の範囲で検査・管理を受けられます。
この記事の要点
- 噛む・飲み込む・話す力の衰えを、7つの項目で検査します
- 健康保険が適用されます。おおむね50歳以上が対象です
- 7項目中3項目以上が該当すると口腔機能低下症と判断されます
- 放置すると誤嚥性肺炎・低栄養につながることがあります
- 気づいた段階であれば、訓練で維持・改善できる余地があります
口腔機能低下症とは
口腔機能低下症は、噛む・飲み込む・話すといったお口の働きが、複合的に低下している状態です。一つひとつの変化は小さく、日常のなかでは「年のせい」と受け止められやすいものです。
しかし、お口の働きの低下は食べられるものが減ることを通じて、全身に影響します。硬いものを避けるようになると食事の内容が偏り、栄養状態や筋力に関わってきます。この段階をオーラルフレイルと呼びます。
| 段階 | 状態 |
|---|---|
| 1. わずかな変化 | 滑舌が気になる、少しむせる、食べこぼしが増える |
| 2. 口腔機能低下症 | 検査で複数の項目に低下がみられる。この段階で対応できると回復の余地がある |
| 3. 摂食嚥下障害 | 安全に食べることが難しくなり、誤嚥性肺炎・低栄養のリスクが高まる |
失った歯を補う治療を受けている人
データ:失った歯を補う治療を受けている人は約249万人。67%が65歳以上です
厚生労働省の患者調査によると、歯の補てつ(入れ歯・ブリッジなど失った歯を補う治療)で 医療機関にかかっている人は全国で約249万人(2,494千人)で、 このうち1,677千人(約67%)が65歳以上でした。
| 総患者数 | |
|---|---|
| 全年齢 | 2,494千人 |
| 65歳以上 | 1,677千人 |
噛む力は、口のまわりの筋肉だけでなく歯が何本あるか、補うものが合っているかにも左右されます。 口腔機能低下症の検査で咬合力を測る際は、入れ歯やブリッジの適合もあわせて確認します。
出典:厚生労働省「患者調査」 2023年(令和5年)/政府統計の総合窓口(e-Stat)表ID 0004026065(2026-07-31 取得)
7つの検査項目
口腔機能低下症は、次の7項目を検査し、3項目以上が該当する場合に判断されます。主観ではなく、測定して確かめます。
| 検査項目 | 何を見るか |
|---|---|
| 1. 口腔衛生状態 | 舌の表面の汚れ(舌苔)の付着の程度 |
| 2. 口腔乾燥 | お口の中の潤いの程度。乾燥は飲み込みにくさにつながります |
| 3. 咬合力(噛む力) | どれくらいの力で噛めているか |
| 4. 舌口唇運動機能 | 「パ」「タ」「カ」を一定時間で何回言えるか。舌と唇の動きの速さを見ます |
| 5. 舌圧 | 舌が上顎を押す力。飲み込む動作に直接関わります |
| 6. 咀嚼機能 | 食べ物をどれくらい細かくできているか |
| 7. 嚥下機能 | 飲み込みに関する自覚症状を質問票で確認します |
検査は痛みを伴うものではありません。いずれも短時間で行えます。結果は数値でお伝えするため、次に受けたときと比べられます。
こんな変化はありませんか
- 硬いものが食べにくくなり、やわらかいものを選ぶようになった
- 食事中や水を飲むときにむせることが増えた
- 滑舌が気になる、話しづらいと感じる
- お口の中が乾く。夜間にとくに乾く
- 食べこぼしが増えた
- 薬が飲み込みにくい
- 食事に時間がかかるようになった
健康保険が適用されます
口腔機能低下症の検査・管理は健康保険が適用されます。窓口でのお支払いは健康保険の自己負担分となります。対象はおおむね50歳以上の方です。
検査で該当した場合は、管理計画を作成し、状態に応じた訓練やお口の環境を整える処置を続けていきます。通院の間隔は状態によりますが、月に1回程度から始めることが一般的です。
入れ歯やインプラントを使用している場合、その状態も噛む力に関わります。あわせて確認します。
※ 記載の期間・回数・費用は目安です。お口の状態や全身の状態により異なり、実際の治療方針は診察のうえ判断いたします。
ご家庭で続けていただくこと
検査の結果に応じて、次のような内容を組み合わせてご案内します。すべてを一度に行うわけではありません。
| 目的 | 内容の例 |
|---|---|
| お口を清潔に保つ | 舌の清掃を含めたお手入れ。誤嚥性肺炎の予防にもつながります |
| 乾燥を和らげる | 唾液腺のマッサージ、水分の取り方の工夫 |
| 舌の力をつける | 舌を上顎に押しつける練習 |
| 唇・頬の力をつける | 唇を閉じて保つ練習、頬を膨らませる練習 |
| 飲み込みを整える | 飲み込む前後の姿勢、一口の量の調整 |
| 噛む力を保つ | 合わない入れ歯の調整、失った歯の補い方の検討 |
1回あたり数分の内容を、毎日続けていただくことが中心です。お口の働きは筋肉の働きでもあるため、使わない期間が続くと落ちていきます。
注意点
口腔機能低下症への対応に関する注意点
- 毎日続けられるかどうかで結果が変わります。通院時の訓練だけでは効果が得られません
- 改善の程度には個人差があり、加齢や全身の状態によっては維持が目標となる場合があります
- 飲み込みの問題が強い場合は、医科(耳鼻咽喉科・リハビリテーション科など)の受診をご案内することがあります
- お薬の副作用でお口が乾いている場合があります。処方している医科と相談したうえで判断します
- 実際の方針は、検査結果と全身の状態をふまえて診察のうえ判断いたします
よくあるご質問
- 口腔機能低下症の検査に健康保険は使えますか?
- はい。口腔機能低下症の検査・管理は健康保険が適用されます。対象はおおむね50歳以上の方です。窓口でのお支払いは健康保険の自己負担分となります。
- どのような検査をしますか?
- 口腔衛生状態、口腔乾燥、噛む力、舌と唇の動き、舌が上顎を押す力、咀嚼機能、飲み込みに関する自覚症状の7項目を検査します。3項目以上が該当する場合に口腔機能低下症と判断されます。いずれも痛みを伴わず、短時間で行えます。
- むせることが増えたのですが、歯科で相談できますか?
- はい。むせが増えることは飲み込む力の低下のサインの一つで、検査の対象になります。ただし飲み込みの問題が強い場合は、医科(耳鼻咽喉科・リハビリテーション科など)の受診をご案内することがあります。
出典
※ 本記事の掲載内容は一般的な情報です。症状や適応には個人差があり、実際の治療方針は診察のうえ判断いたします。費用は2026-07-31時点の税込金額です。
※ 点検日(2026-07-31)は、監修者が記事内容を点検した最新の日付です。内容に実質的な変更があった場合は最終更新日を更新します。
「まだ困っていない」段階で確かめておくことに意味があります。検査は短時間で終わります。
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